日本とオーストラリアの狭間で

昭和生まれ奇想天外な私のこれまでの歩み。社会脱落者としてこれからどうする?40歳目前独女の独り言。

豪州で働く 1 - 労働ビザの問題

ここ何年かの間に豪州で何回か大きなニュースになった一つに労働ビザの問題がある。労働ビザにも色々種類があるけどここで取り上げられているのは悪名高いビザのサブクラス457。これは平たく言うと豪州の民間企業がスポンサーとなり、外国人労働者には2-4年の就労ビザが出るというもの。ただ2018年2月でこのビザは廃止されて、これに変わる二つのサブクラスが設けられた。この辺の事は正確かつ詳しい情報がネットに山ほど載っているので、ここでは就労ビザの制度以外の事をごく端的に書いてみる。

 

457ビザは豪州政府、世論、企業、労働者の全ての観点から評判がよろしくない。政府と世論としては失業率の高い中でわざわざ外国人労働者を受け入れるのはおかしいという事。特に一部の労働組合などの働きかけにより457ビザが豪州人の就職機会を奪っているという問題は何度もトップニュースに上がり政治的にも利用されてきた。確かにこのビザの制度を乱用、もしくは悪用する企業もあるけど、きちんと規定に沿っている場合は彼らが主張する単純労働者の雇用の機会を奪う事はありえない。もちろん彼らの主張にも一理あって事実も含まれる。ただ数字だけを見て457ビザを廃止すれば失業率が改善されるというのは根拠はないというのが実際のところだろ思う。

 

一部の457ビザ保持者(労働者)はこのビザを奴隷ビザと呼ぶ。それは雇用主がビザのスポンサーという立場を利用して外国人労働者を不当に長時間労働させたりキツイ仕事を全て負わせ、労働者が少しでも不満を言えばスポンサーに逆らうなら解雇すると脅すというようば図式が出来上がっている。雇用主は457ビザの保持者の大半がその後の永住権を視野に入れている事を知っているため、労働ビザがキャンセルされるのは困るという弱みにつけ込むのである。もっともこういう不当労働はビザの規定に反するもので、移民局にこういう実態が見つかれば大変だ。また特にアジア人向けに労働ビザのサポートが受けられる仕事を斡旋する業者が存在するのだけど、労働者が借金までして多額の費用を業者に支払い労働ビザを得て豪州に来ても、仕事が規約違反の給料の低い単純労働だったいうのもニュースになっていた。当然これも労働ビザの悪用である。もちろんこれはあくまでも一部の最悪のケースで良識のある雇用主もたくさんいる。

 

最後に企業側からするとこのビザのスポンサー申請には厳しい条件があって、しち面倒臭い手続きが必要で、さらに費用もかかるためわざわざスポンサーになりたくないというのが一般的である。大企業とかになるとビザの対応が整備されていて何人もの外国人労働者をスポンサーするというケースもあるけど、逆に中小企業は457ビザのスポンサーは初めから引き受けないという所が多い。しかも外国人労働者に対しては移民局の定める一定額以上の給料を支払わなければならず、職種や業種によっては相場より高い給料になるのでビザ取得後の金銭的負担も大きい。

 

457ビザは政府の規める職業リストに入っている職種にしか適応されない。基本的には専門系の分野が多く、例えば工場での単純作業の仕事などは含まれない。労働者(申請者)はビザ申請の際にその職業分野のスキル(学歴/職歴)と英語レベルの証明をしなければならない。だからスポンサーさえいれば誰にでも労働ビザが取れるという事ではない。仕事を探す時も大半の求人が永住権かその他働けるビザを持っている人に限ると明記されている事も多く、スポンサーになってくれる雇用主を探すのは簡単なことではない。ビザサポートをしてくれるとなっても先ほどあげたように長時間労働などを強制させられたり、またはビザの申請にかかる費用全額を労働者に支払わせたり、場合によっては給料は規定通り支払うけど、その後そのうちの何割かを会社に戻せという要求をするところもあるそうだ。

 

これだけみるとやはり良いところなんて一つもないビザだと思うけど、労働ビザ本来の趣旨に則り、規定に従い、また正当に使用されている場合は457ビザはスポンサー企業にとっても、労働者にとっても、また豪州の国益にとっても有益になるはずである。例えば最新のIT技術の開発を進める豪州の小さな企業が国内で技術者を確保できないとなった場合、海外から専門の技術者を457ビザを使って雇用するとうような場合、企業にとっても、豪州のIT産業にとっても、また外国人労働者にとってもプラスになる。もしその企業が事業に成功して会社が大きくなれば豪州人雇用拡大にもつながるはずだ。

 

悪名高き457ビザの時代は終わったけど、制度的にはさほど変わらない新しい労働ビザシステムに移行されても同じような問題は繰り返されるだろと私は思う。そして残念ながら豪州の景気がよほど改善されて失業率が下がらない限りはビザの問題は政治利用され、多くの企業と外国人労働者、さらには移民局までもが対応に右往左往する事になりかねない。