日本とオーストラリアの狭間で

昭和生まれ奇想天外な私のこれまでの歩み。社会脱落者としてこれからどうする?40歳目前独女の独り言。

豪州での医療 私の体験 3

手術が決まった後私は検索魔と化す。理由はもちろん自分の受ける手術について知りたいというのもあるけどネックは英語。英語がわからない分色々読んだりして流れなどを理解しておきたかったのだ。これで知らない医療用語なども多少はカバー出来るし英語環境での手術のハードルを下げられた。日本語と英語の両方で調べると同じ手術でも随分過程が違う。日本のが良かったと思う部分と豪州の方が良いかもと思う部分と両方あった。本音を言うと私は日本で手術を受けたかったけど、調べるうちに豪州でも大丈夫と思えるようになってきた。

 

手術前、私はストレスから来ているであろう胃腸の問題を引きずり軽い風邪のようなものを引いてしまった。胃腸は過去にも同じような経験をしていて時期が来ないと治らないのでこちらは騙しながら様子見にしていた。問題は喉風邪の方だった。咳が出ていたらしたら手術が延期になる可能性もある。とにかく家にあった薬を駆使して喉を死守することに全力を注いだ。咳はほとんど出ていなかったけど咳止めとトローチ、鼻炎に進むのを防ぐために鼻腔スプレーを使った。前日は人目も憚らずマスクをして会社に行った。以前にもしていった事はあったのでそこまで驚かれなかったが、こちらではマスクをしていると重病に思われるらしい。胃腸は相変わらずだったが嘔吐や下痢という訳ではないので諦めて放置した。

 


手術当日、1時半に病院に行く。私が今回行ったのは小さなPrivateの病院で受付を済ませて更に手術の受付に進んだ。ここまでは家の奥さんに付き添ってもらい、受付後から一人になった。待合に座って数分後、私は看護師に呼ばれた。そこで血圧や酸素を測ったりして問診的なものを受けた。私が今まで唯一アレルギーのあった薬があったのだけど、とても特殊な薬剤で英語名は知らない。念のためと言われて再びグーグルのお世話になり英語表記のものを探してそれを書類に記入していた。リストバンドをつけられてそのまま待機室に行った。そこでは着ているものを全て脱いで手術用のガウンを着てベッドで待つように指示される。私の場合待ち時間が長い事は知らされていたので、横になったり、携帯をいじったり、テレビを見ながら時間を潰した。途中カーテンの向こうの会話が聞こえてきてそれはなぜか私を安心させた。

 


予定時間になっても呼ばれなかった。5時を少し過ぎた頃ようやく専門医が入ってきた。手術の概要の説明と同意書にサインをする。簡単で標準的な手術だからなにも心配いらないからねと言うような事を言われて会話は終わる。しばらくして今度は麻酔科医がやって来て血管に針を入れて準備する。いよいよ来たかと思った。麻酔医は私の血管が細いので通常使う手の裏の血管は諦めていた。それは私も予想していたので私が血液検査などでも唯一使える腕の血管を教えてそこに針を刺す。血液検査は日本で定期的に行っているし、しかも採血量の多い私は針を刺されたままというのに慣れている。麻酔科医は雑談を交えながらその血管に針を入れていった。数々の注射針の後を見て、この血管は可哀想だけど頑張っているのねと言いながらあっさり処置が終わった。その時に挿管の話もされる。全身麻酔中は挿管をするので喉を見せて欲しいと言われた。ネットでも挿管について読んだけど、もし挿管中に意識があれば相当不快感があるという。挿管中は私の意識がない事を願うしかなかった。

 

 

その後直ぐに手術室に向かう。日本だと普通に歩いて手術室に入っていきドラマのようではなかったという感想をよく見るけどここではベッドに寝たままの移動、つまりドラマのような光景だった。天井しか見えなかったので手術エリアがどういう構造かは分からなかったが、少し進んで一つの手術室に着いた。上には手術用のライトもあって何人もの人が室内にいた。そのベッドから手術台に上がりガウンの後ろの紐を解くように言われる。ガウンはかけたまま酸素濃度を測る装置を指に、心電図を取るようなものも装着された。吐き気どめの薬を入れるとも言っていたような気がする。酸素マスクをして普通に息をするように言われる。怖いという恐怖感を感じていたら酸素マスクを取り別のマスクを押し当てられる。そして腕の血管に何かが入っていくような気がして、少し咳き込んで苦しいと思ったところで意識がなくなった。

次に気がついたのは手術室ではなくてリカバリールーム(回復室)のようだった。挿管も既になく腹部に多少の痛みがあったが、とにかく身体が動かず眠たいというだけだった。声を掛けられて質問に答える。痛み止めは要らないけどお腹を温める物を持ってきてもらい、そのまま休む。その後意識がもう少し回復すると別の場所に移されて、そこで少しして着替えるように言われた。ベッドから立とうとするとまだふらふらする。ようやく着替えると車椅子で次の部屋へと進む。そこには椅子が置いてあり、サンドイッチと紅茶が出された。時間は7時少し前。気がつけば絶飲食で朝の7時前から何も食べていなかった、が相変わらず胃腸の問題があり食べる気はしない。でも食べないと何か詰問されそうでなんとか半分くらい押し込んだ。そこに専門医がやってきた。手術は上手くいった事と腫瘤は思ったより小さかったという事を聞いた。数週間後に再び予約をして細胞検査の結果を聞く事になった。

 


ちなみに、豪州のPrivateの病院では全身麻酔手術後に飲み物とサンドイッチが出るというのは有名な話である。日本人の感覚だと絶食後にいきなりこれはと思うがこちらでは標準のようだ。私が手術の順番を待っている時に絶食ですごくお腹が空いているという会話を何度か聞いた。私も看護師に聞かれたけどそもそも胃腸の調子が悪かったしむしろ絶食は好都合だったので、全然お腹は空いていないというと驚かれた。サンドイッチを半分食べたところでお迎えが来た。病院側が連絡してくれたようだ。もちろん迎えが来なければ病院から出ることも出来ない。私はまだ手術が終わったという実感もなく家に帰った。

 


今回私が手術を受けた病院は数年前に前面改装されていて設備も新しかった。電気はおそらく全てLEDでモニターやその他の機器も新しい感じだった。当然日本の病院でもこのくらいは標準装備かもしれないけど、私が通っている日本の古い公立病院に比べると雲泥の差があった。日本のような病院独特の雰囲気は少なく受付にもソファーがありリラックスした感じだった。私は今回あくまでもPrivateの病院での手術だったけど、スタッフも親切でこれなら豪州で受けても良かったと思えた。病院によってまた状況によっても変わってくると思うが豪州の医療も日本と同じように信頼できるという結論に私は至った。